日本の高齢化や労働力不足を背景に、多くの外国人技能実習生が来日し、さまざまな産業分野で活躍しています。しかし、技能実習制度には多くの課題が残されています。
特に、実習生が海外現地の送り出し機関に支払う高額な手数料や、それに伴う借金の問題は深刻であり、これが実習生の生活や労働環境に悪影響を与えることもあります。さらには、経済的な負担が失踪に繋がるリスクも指摘されています。
そこで本記事では、実習生が負担する具体的な費用の実態やその影響、さらには特定技能制度との比較を通じて、外国人労働者のより良い雇用環境について考えていきます。
技能実習制度の目的と現状
そもそも技能実習制度は、日本の技術や技能を発展途上国の若者に提供し、それを母国に持ち帰ってもらうことで国際貢献を目指す制度として設計されました。
実習生は最大で5年間、日本国内の企業で働きながら技能を習得します。しかし、実態は労働市場の一員として扱われ、現場での過酷な労働条件や低賃金が問題視されてきました。
一方で、以前よりも状況は改善されましたが、さまざまな理由で失踪してしまう実習生も未だに多いのが現状です。
以下は、出入国在留管理庁が公開している、技能実習生の失踪者数の推移です。
出典:出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」(平成25年~令和4年)
この表を見ると、失踪者数は未だに増加傾向にあることがわかります。
失踪の原因はさまざまですが、そのうちの一つとして挙げられるのが、海外現地送り出し機関等へ支払う高額な手数料に伴う借金と、そのプレッシャーです。こちらについては、次章以降で詳しく解説していきます。
実習生の85.3%が支払う高額な手数料
出入国在留管理庁による調査によれば、外国人技能実習生の85.3%が、海外現地の送り出し機関に対して何らかの費用を支払っていることが明らかになりました。
これらの費用は、実習生が日本に来るための手続きや渡航費、日本語教育、さらには生活支援費用として徴収されています。
特に、ベトナム出身の実習生が最も高額の手数料を支払う傾向があり、全国籍で見ると、平均的な渡航前の費用は9万4千円から65万6千円に及びます。
出典:出入国在留管理庁
また、支払った総額の内訳については、以下のような回答がありました。
出典:出入国在留管理庁
派遣手数料、事前教育費、保証金・違約金などが主な内訳となっており、発展途上国の外国人にとっては非常に大きな費用です。
このような費用は、実習生の経済的な負担を増大させ、渡航後の生活にも影響を与えています。
実習生の借金と失踪リスク
出入国在留管理庁による調査では、技能実習生の借金に関する実態なども明らかになりました。
実習生の54.7%が負う借金
調査によると、技能実習生の54.7%が渡航費用を賄うために借金をしています。
出典:出入国在留管理庁
その平均借入額は54万7千円であり、これに加えて日本での生活費や送金のためにさらに借金を重ねるケースも少なくありません。
出典:出入国在留管理庁
高額な借金を抱えている実習生は必死に返済をしなければならず、給与が低い場合や労働環境が厳しい場合には、そのストレスが大きくなります。
失踪に繋がる要因
以上のように、高額な借金と経済的なプレッシャーは、実習生の精神的な負担を増大させ、失踪のリスクを高める要因となります。
失踪した実習生は、不法滞在者となり、より危険な状況に追い込まれる可能性があります。
調査データからも、失踪率が高い国では、特に送り出し機関への高額な手数料や借金が影響していることが予想できます。
経済的な負担が過重になることで、実習生は合法的な手段での生活が困難となり、失踪を選んでしまうようです。
技能実習制度は廃止に
こういった問題が明るみになり、2022年から技能実習制度の見直しについて議論が進んでいました。
そして2024年3月15日に、技能実習制度の廃止および「育成就労制度」の新設における法案が閣議決定されました。
育成就労制度の目的は、「人材育成」および「人材確保」を目的とする制度であることが明言され、実態に即した制度への変更となります。
育成就労制度とその要件
育成就労制度は、前提として後述する特定技能制度への移行を目指すものであり、以下のように日本語能力の要件があります。
就労前:日本語能力試験N5等合格または相当講習の受講
特定技能1号に移行する場合:日本語能力試験N4等合格
特定技能2号に移行する場合:日本語能力試験N3等合格
特定技能へ移行する場合は、これに加えて技能検定や特定技能評価試験の合格も必要になる想定で、詳細はこれから決められていきます。
特定技能制度が今後の外国人採用のトレンドに
特定技能制度は、特定の分野で即戦力として働ける外国人労働者を受け入れるための新しい制度(就労ビザ)です。
特定技能制度の対象となる産業分野は以下12分野で、特に人手不足が深刻な業界で積極的に活用されています。
以下は、特定技能制度で日本に在留する外国人数の伸びを表したグラフです。
2019年4月に制度がスタートし、2020年以降コロナ禍が収まってから、毎月急激に在留人数が伸びていることがわかります。
また、以下のグラフは各産業分野の在留人数および割合をまとめたものです。
日本政府も制度の普及に力を入れており、今後は特定技能制度が企業の外国人採用のトレンドになっていくことが想定されます。
特定技能外国人を採用する方法
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この全てを自社で行うことも可能ですが、初めて特定技能外国人を採用する場合は登録支援機関をまず利用する場合がほとんどです。
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