ミャンマー国軍がクーデターによって全権を掌握してから3年が経つ今、ミャンマー国民の生活は困窮し、国土は荒れ、混乱が続いています。

 

国内では希望を見出せない環境だからこそ、海外で働き、仕送りで家族を養うことを夢見て国外に脱出する若者がミャンマーでは増え続けています。

 

そんな中で、ミャンマー国軍は2月10日に、18~35歳の男性と18~27歳の女性を対象に徴兵制を実施することを発表しました。しかし、国民の反発を踏まえ、女性はいったん対象外となっています。

 

さらに、5月1日には男性の海外就労手続きの一時停止を発表したことで、国内ではますます混乱が広がっています。

 

そこでこの記事では、ミャンマー軍事政権の徴兵制について触れ、2024年5月時点での最新情報をお伝えしていきます。

ミャンマー軍事政権による徴兵制とは

 

ミャンマー国軍がクーデーターによって全権を掌握してから3年が経ちますが、ミャンマー各地では抵抗勢力との戦闘が続き、国内では混乱が続いています。

 

そんな中で、ミャンマー国軍は2024年2月10日に、18~35歳の男性と18~27歳の女性に対して徴兵制を実施することを発表しました。上述のとおり女性はいったん対象外となっていますが、今後どうなるのかは不透明です。

 

徴兵制の決定により、ミャンマーでは多くの若者が徴兵を避けるため、隣国のタイなどへ国外脱出したり、民主派勢力側の武装勢力に加わったりという動きが活発になっています。

 

また、ヤンゴンの旅券事務所には出国を希望する若者が殺到し、窓口には長蛇の列ができる状況となっています。正規の手続きでパスポートを取得しようとすれば数か月かかってしまうため、係官に賄賂を渡す人も出ていると言われており、混乱は増しています。

5月に入り、方針が二転三転

 

2024年5月に入り、男性の海外就労手続きについての方針が二転三転しています。

 

以下では、最新情報を踏まえてミャンマーの現状をお伝えしていきます。

5月1日、男性の海外就労手続きを一時停止

2024年5月1日、ミャンマー国軍が統治する労働省は、海外就労を目指す男性の国外出国を一時的に制限しました。

 

この措置は、国軍が2月に徴兵制を導入して以降、国外への若者の流出が増えたことへの対応であると見られており、人材の国外流出を防ぐ目的であると考えられます。

 

しかし、軍事政権からは十分な説明もなく、突然男性向けの海外就労の手続きが滞ったことで、メディアや国民はこれに強く反発しました。

5月6日、男性の海外就労手続きを再開

ミャンマーの複数の送り出し機関によると、軍事政権は5月6日、同月1日から一時停止していた男性の海外就労手続きを「再開」しました。

 

同日朝には「通常の半数の海外就労手続きを受け付ける」という通知が政権からあったそうですが、最終的には再開が決まったようです。

 

わずか5日間での方針転換であり、対応が二転三転しています。

 

しかし、再開された手続きでは、男性労働者の個人情報の確認が従来以上に厳格化されているようで、手続きの完全な正常化には時間がかかる可能性が指摘されています。

 

さらに、一部の送り出し機関によると、「18~22歳あるいは31歳以上の男性ならば海外就労ができる」と政権から回答があったとされており、不透明な状況です。

 

ミャンマー国軍は体力のある20代半ばの男性を兵士として求めている可能性が高く、これが事実であれば年齢によって海外就労が阻まれる可能性があります。

 

これにより、多くの若者が海外就労のチャンスを失うこととなり、不法入国や密入国を助長する懸念も高まっています。

徴兵制は今後どうなる?

 

軍事政権にとって、ミャンマー国民が海外で働くことによって獲得できる外貨は非常に重要です。

 

海外就労を止めることによる経済的なメリットはないですし、国民の海外志向も強いため、政権と国民の利害は一致しています。

 

しかし、透明性の欠如と十分な説明がないまま海外就労の手続きが滞ったことで、社会的な混乱が加速してしまいました。

 

完全な海外就労禁止にまで政権が踏み込むことはないだろうと見られていますが、徴兵制をストップする動きが政権に見られるわけでもありません。

 

ミャンマー軍事政権は短期間で方針も二転三転するため、ミャンマー国民の海外就労における最新情報を掴むには、現地の送り出し機関との連携も重要です。

ミャンマー人の採用は控えるべき?

2021年のクーデターから混乱が続くミャンマーですが、ミャンマー人の採用は控えるべきなのでしょうか?

 

2021年以降も、日本で働くミャンマー人の数は増加し続けており、在留ミャンマー人(86,546人)は、国籍別で国内で8番目に多い数となっています(2023年末時点)。

 

 

出典:出入国在留管理庁「国籍・地域別 在留外国人の構成比(令和5年末)」

 

 

また、就労ビザとして今後の主流となる「特定技能」の在留資格で滞在するミャンマー人は11,873人となっており、これは国籍別で見ると国内で5番目に多い数です(2023年末時点)。

 

 

 

出典:出入国在留管理庁「国籍・地域別 在留資格別 在留外国人数(令和5年末)」

 

 

上述したとおり、ミャンマー軍事政権にとって海外で働くミャンマー人は貴重な外貨獲得の源です。

 

経済的なデメリットも非常に大きいため、軍事政権が国民の海外就労を完全禁止にしてしまうことは考えにくく、今すぐミャンマー人の採用を控えるべきであるとは考えていません。

 

むしろ、国内に希望を見出せないからこそ、家族を養うため海外で働くことを夢見る若者を採用することは、さまざまな面でメリットが大きいでしょう。

 

しかし一方で、「とにかくミャンマーから出ること」が目的となってしまっている若者がいることも事実です。このように、短期的な目線で海外就労を考えるミャンマー人が増えてしまう可能性があり、この点は今後の課題となりそうです。

 

いずれにせよ、軍事政権による情勢は不安定なため、ミャンマー人の採用を考える際は、現地に精通した日本の登録支援機関などを活用することをおすすめします。

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